その使い方、大丈夫?保冷剤の再利用と環境負荷
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じわじわとたまってしまう、保冷剤。
一時期、無印良品にて回収とリユースを行っていましたが、2023年9月30日をもって終了してしまいました。
保冷剤の回収は受け付けていますか? - よくある質問 | 無印良品
再利用の方法もいくつかあるけど、リユースされるのが一番環境への負荷が少ないように感じていたため、残念です。。。
そんなたまってしまうばかりの保冷剤の活用法について、ネットで調べると出てくるものの中には、個人的に「どうなの?」と思うことがあり、調べたことを共有したいと思います。
- 保冷剤の成分はプラスチック?
- 保冷剤が自然界に流出するとどうなるか
- 【体験談あり】保冷剤のおすすめしない再利用法
- 環境配慮型の保冷剤もある
- お店によっては回収しているところも
- まとめ:保冷材との付き合い方
保冷剤の成分はプラスチック?
ケーキなどを買ったときについてくるジェル状の保冷材の中身は、多くは約90%以上の水分と高吸水性ポリマーです。
高吸水性ポリマーは紙おむつにも使われます。高吸水性ポリマーは僅かな量で多くの水分を取り込むことができ、物理的な圧力が加わっても水が出てこず、ゼリー状に保つことができます。
なぜ高吸水性ポリマーが保冷材に使われるのかというと、これを使ってゼリー状にして凍らせた方がゆっくり溶け、冷却効果が長持ちするためです。(参考:岡畑興産ブログ「高吸水性ポリマー とは?その特徴や用途について詳しく解説!」)
このポリマーはポリアクリル酸ナトリウムというものが使われています。これが簡単に言うとプラスチックです。
保冷剤が自然界に流出するとどうなるか
いくつか文献を見てみたのですが、生分解しやすいかどうかは、分子量や分子構造によって変わるそうです。
現在主流のポリアクリル酸ナトリウムは生分解されにくい、という文言が目立ちました。
(参考リンク:甲野 裕之,2018「水を持ち運ぶ化学―木質を用いた高吸水性樹脂の開発―」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/66/8/66_394/_pdf、
髙木 駿,2020「生分解性高吸水性高分子の分子設計」https://mie-u.repo.nii.ac.jp/record/14228/files/2020ME0126.pdf
)
私なりの結論となってしまいますが、高吸水性ポリマーは水分がなくなるとかなり小さくなるけれども、自然界に残ってしまうのであればそれは「マイクロプラスチック」なのだと思います。
なので「保冷剤の中身は安易に自然界に流出させない方が無難」だと思います。
【体験談あり】保冷剤のおすすめしない再利用法
「保冷剤」「活用」といったワードで検索をすると、そのまま使う以外に中身を出した使い方も紹介されます。
調べたことと、実際にやってみた経験から、個人的に「おすすめしない」再利用方法を挙げたいと思います。
植木の保水剤
土の表面に保冷剤の中身を敷き、水やりの代わりにするというものです。土に混ぜ込んで保水材として使うという方法もありました。
確かに砂漠の緑化に高吸水性ポリマーが使われてはいますが、だからマネしても平気というわけではありません。使われているものが同じポリマーとも限りません。
この方法は実際にやったことはないですが、分解されるかもわからないものをまき散らしてしまう気がして、「自分ならやらない」と思う方法の一つです。
ほかの瓶に詰め替えて消臭剤や芳香剤としての利用
これはやったことがあるのですが、「瓶」に移し替えてしまったことが失敗でした。
インテリア性を重視するためか、「瓶に移し替えて~」という表現をよく見かけますが、水分が抜けて乾ききったポリマーが瓶に張り付いてしまい、処分が大変でした。

こうなると全然取れないんです・・・結局少し水を足してまたゲルに戻して、ウエスでふき取って。こびりついてるとこの作業を何回か繰り返しました。
移し替えるなら、瓶ではなくそのまま一緒に燃えるごみとして捨てられる容器が良いのだと思います。水分は抜けるので、焼却炉の負荷は減らせそうですね。
環境配慮型の保冷剤もある
保冷剤の中にはポリマーを使わず、水のみが入ったものや、生分解性のある天然由来の原料から作られたものもあります。
そのまま流してOK!腐らない水の保冷剤
株式会社トライ・カンパニーの保冷剤「パワーアイス」は、RO水(簡単に言うと不純物を含まない純水)100%なので、そのまま排水口へ流せます。
菅原冷蔵株式会社の「クールアイスエコ」は弱酸性次亜塩素酸水が充填されていて、保冷剤として利用した後は除菌剤として掃除などに使えると書かれています。


これらはゲル状のものと比べると冷却効果の持続がやや短くなってしまうデメリットがありますが、廃棄のしやすさや環境汚染の心配がないので、こういうタイプを取り扱ってくれるお店が増えてくれると嬉しく思います。
作物残渣から作られた生分解性のある保冷剤
2023年10月、革命的な吸水ポリマーを用いた保冷剤「サイクール」が誕生しました。
通常廃棄されるオレンジの皮などを原料とし、土に埋めれば1年で完全分解するというポリマーで、元々は農業向けに開発されていたものだそうです。
この保冷剤、無印良品が先行導入しているらしいです。
有機ポリマーについて、開発した企業のプレゼンテーションでも詳しく知ることができます。
世界のどこでも地産地消できる土に還る吸水性ポリマーで、持続可能な農業の実現を目指す「EF Polymer」(ICC KYOTO 2024) | 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION
お店によっては回収しているところも
調べると、大手企業で全国対応している回収は見当たりませんが、個人経営の飲食販売店やボランティア団体で回収しているところがありました。
ちこりぃの住む静岡での例をご紹介します。
海をまもろう。(ボランティア団体)
吉田町でビーチクリーン等の活動をされている団体です。
【2024年資源回収まとめ】2024年12月17日使用済み歯ブラシと中身が銀色の紙パック(テトラパック)をテラサイクルへ送りました | 海をまもろう。
まとめ:保冷材との付き合い方
ゲル状の保冷剤には吸水性ポリマーというプラスチックが使われており、自然界に流出した際には生分解されるかが不明瞭です。ほぼ水分だからといって排水口に流してしまうのはNG!プラスチックをばらまいてしまうだけでなく、排水口が詰まってしまう可能性もあります。
消臭剤や芳香剤として再利用するなら、水分が抜けて乾いた後そのまま捨てられる容器がお勧めです。
便利で人体にも悪影響はないといわれる保冷剤ですが、もらう量や廃棄の仕方など、上手に付き合っていきたいものです。